Quand la Forme Parle (France)

|かたちが語るとき (フランス展)

mountain retreat in Nasu|那須の山荘

かたちとは“物質がつくりだす身体と現実の結び目”である。それは固定的なものではなく、結ばれてはほどけ、また結ばれることを繰り返し、記憶の中に織り込まれていく。身体の環境とそれ以外の環境の両者の間に位置し、索引と徴候の狭間に立ち現れる、そのような存在である。

「那須の山荘」では、雑木林の豊かに繁る起伏にとんだ風景の中にあって、身体とランドスケープの結び目を、運動と風景の時間の中につくりたかった。広大な自然による包摂の建築による対象化、建築による再包摂と自然への拡張、建築の部分と身体の接触による自然への同化。小さく浅い、潜れる家型の壁の重なりと林に照応する3層の床は、場所と身体の機微を時間の狭間に構造化し、遠望、内部、近傍、接触の経験の中で自己と自然環境との「認識のスケール」を伸縮しつづける。

 

Quand la Forme Parle「かたちが語るとき」 フランス展 より

photo Nicolas Brasseur

2020.01.26

wall for restaurant|食堂の壁

人は環境との間で、包摂感や対象化による認識の内在化と外在化を無意識の内に繰り返し、その狭間に像が結ばれた時、自己を環境の中に位置付けることができる。地面や建築や物たちは、環境視から焦点視までの知覚をつくりだし、認識はグラウンドとフィギュアを入れ替える。建築のかたちを考えるということは、その場所の「認識のテクスチュア」を書き換えることで、それは、フィギュアであり、同時に、グラウンドにもなる。

「食堂の壁」では、山脈を望む平野部のロードサイドという牧歌的だが散漫な光景の中で、見知らぬ人々と居合わせる食堂における時間と風景の結び目をつくりたかった。散在する大小の壁と緩やかに傾斜する天井(屋根)の優柔不断な幾何学は、浮遊する多焦点と深浅が同居する被視界深度、速度によって変化する遠近に歪みをつくりだし、つかみどころなく固まる。

 

Quand la Forme Parle「かたちが語るとき」 フランス展 より

photo Nicolas Brasseur

2020.01.26

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